北巣本保育園の農園となっていた農地に対する代執行の件 #1 事実関係について
定型的な報道はMSN産経の記事でも読んでいただくとして。
まず事実関係を、表題の農地(以下「当該農地」という。)の旧所有者であり保育園理事でもある松本剛一氏に近い政治的立場にあると見られる戸田ひさよし門真市議の一連の記載と、それと対立していた格好になる大阪府が10月16日付けで発表したプレスリリースを元に確認したい。以下、戸田氏ウェブサイト及びその掲示板での言及を[戸田]、[戸田]所引の松本氏の陳述書「園部一成 門真市長に訴える 第二京阪道路建設によってこども達の菜園を奪わないで」の記載を[松本]、同じく「ムーブ!」による一連の報道の内容を[ム]、その他今回の事件についての報道を[報道]、府のプレスリリースでの言及を[府]とする。
- H1~2頃?
- 松本氏、問題の農地を相続する。門真税務署(?)、租税特別措置法に基づき、当該農地について「農地等についての相続税の納税猶予」を認定。時期については、後述する当該納税猶予の解除状況からの逆算。
- H15.9.25
- 国及び日本道路公団、松本氏に交渉を開始する[府][松本]。ただし[府]は「H15以降」とする。
- H17.2.13
- 西日本高速道路と松本氏の「2年2ヶ月ぶり」の直接交渉[松本]。この間本当に国/公団が何もしていなかったのかどうかは第三者にはうかがい知れないが。
- H18上半期
- 西日本高速道路と松本氏、数度接触[松本]。
- H18.8.11
- 第二京阪道路の門真市付近の区間、事業認定を受ける[府]
- この間?
- 松本氏、国を相手取り事業認定処分取消請求訴訟を大阪地裁に起こす(以下「A訴訟」という。)[松本]。西日本高速道路が「係争中につきノーコメント」という[報道]のはあるいはこの事案を指すか。
- H19.2.27
- 国及び西日本高速道路、大阪府収用委員会に対して収用裁決申請・明渡裁決の申立て[府]。
- H20.3.11
- 大阪府収用委員会、当該農地について収用裁決[府]。
- H20.3.23
- 松本氏、地元説明会に出席[松本]。
- H20.3.27
- 収用裁決に基づき、国ないし西日本道路公社、補償金を供託[府]。
- H20.4.10
- 収用裁決に基づき、西日本高速道路、当該農地の所有権を得る[府]。
- H20.4.10
- 収用裁決に基づく当該農地の明渡し期限[府]。
- H20.4.10
- 松本氏、大阪府を相手取り収用裁決取消訴訟(以下「B訴訟」という。)を大阪地裁に起こす[松本]。併せて行政代執行の執行停止申立(以下「C申立」という。)[府][松本]。
- H20.4.10以降
- 松本氏、法務局からの通知により「はじめて」当該農地の所有権が西日本高速道路に移転したことを知る[ム]。ただし、訴訟提起と代位登記通知書郵送の先後関係、松本氏と当局との交渉経緯、強制収用の手続きなどから、通知文により「はじめて」所有権移転の事実を知ったとする主張には疑問を強く感じる。
- H20.4.10以降H20.6以前
- 収用の結果、所有権が西日本高速道路に移動したため、門真税務署(?)、松本氏に対する「農地等についての相続税の納税猶予」を取り消し、納税通知書を発付。この納税猶予制度では20年間耕作を継続すれば相続税が免除されるところ、猶予19年目にして所有権移転が発生したため取り消されたもの。相続税と利子税を併せてその請求額は2200万円にのぼった[戸田][ム]。
- H20.5.12
- 西日本高速道路、代執行庁である大阪府知事に対し代執行請求書を提出[府]。
- H20.5以降H20.8.29迄
- 大阪府から松本氏に対して任意の明渡し勧告[府]。
- H20.8.29
- 代執行庁たる大阪府、松本氏に対して行政代執行法に基づく戒告。当該農地の明渡し期限H20.9.17[府]。
- H20.10.1
- 大阪地裁、C申立を却下[府][戸田]。
- H20.10.2
- 戸田氏、C申立について大阪高裁に対して即時抗告[戸田]。
- H20.10.6
- 代執行庁たる大阪府、西日本高速道路に対して代執行令書を交付[府]。すなわち、府としての代執行決行の意志決定がこの日までになされたものと推測される。
- H20.10.8
- 松本氏と「国側」、高裁で「訴訟の」進行協議[戸田]。国が被告に入る訴訟となればA訴訟が想起されるが、文脈からはC申立のことか。
- H20.10.16
- 府、プレスリリースを公開[府]。同日の内に代執行[府][戸田][各社報道]。
- H20.10.30
- 高裁によるC申立特別抗告に対する(?)決定日[戸田]。橋下知事発言に「2週間遅れれば~」とある[報道]ことから、高裁の決定日が30日頃になるというのは首肯される。
要するに、去る10月16日に行われたのは「地蔵や農作物等の撤去についての行政代執行」であり、「土地/用地の強制収用」ではない。有効無効については当事者間に争いがあるにせよ、用地の強制収用は4月時点で終わっている。ここテストに出るぞ……もとい、プレスリリースまでありながら用地の強制収用って見出しに書いちゃう一部マスコミは恥を知るべきだ。
ついでに言うと、ご神木とされる樹木の伐採に至らなかったのは、単に民法上立木の所有権は土地の所有権に付随して移転するものだから既に西日本高速道路の所有物であり(勿論強制収用が適正なものであればという前提でのことであるが)、わざわざ行政代執行するまでもない、というだけのこと。これが農作物になると実際に耕作した松本氏(と保育園?)の所有と解する余地があるので、西日本高速道路側も勝手に処分できないので、行政代執行の出番と相成ったわけだ。
閑話休題。この一連の流れそのものについては松本氏及び戸田氏一派も府もどっちもどっちだと思っているのであるが、同情せずにはいられないのは相続税に関する取り扱いだ、というところで次回に続く。
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